診断士として現場に立って学んだ、「本当に効く問い」
コンサルティングというと、鋭い分析や華やかな提案を思い浮かべる方が多いかもしれません。ですが、実際の現場で物事が動く瞬間は、たいてい地味です。多くの場合、ひとつの問いかけがきっかけになっています。
今日は、これまでの支援の中で「効いた」と感じた問いを、いくつかご紹介します。難しい問いではありません。だからこそ、普段は誰も口に出さないのだと思います。
答えを持っていくより、問いを変えるほうが早く進むことがあります。経営者はすでに答えを持っていて、それを言葉にする機会がないだけ、という場面が少なくありません。
「それは、誰の課題ですか?」
会議で課題が並んだとき、この問いを挟むと空気が変わります。「業界全体の課題」「景気の問題」として語られていたものが、自社が手を打てる範囲に絞り込まれていくからです。
裏返せば、自社ではどうにもならないことに悩んで消耗している会社が、とても多いということでもあります。手が届く範囲を明確にするだけで、動き出せることがあります。
「やめるとしたら、何をやめますか?」
新しい取り組みの話をしているときに、あえて聞く問いです。人も時間も限られている中小企業では、何かを始めるには何かをやめる必要があります。
この問いに答えられないまま始めた施策は、ほぼ確実に途中で失速します。逆に、やめるものが決まっている取り組みは、実行される確率が段違いに高いのです。
「その数字、いつ見ましたか?」
売上や粗利の話をしているときに、直近でその数字を確認したのがいつかを聞きます。「決算のとき」という答えが返ってくることは、決して珍しくありません。
数字を見る頻度は、そのまま意思決定の速度になります。年1回しか見ない会社は、年1回しか軌道修正できません。
「社員はそれを、どう説明すると思いますか?」
社長が語る自社の強みと、社員が語る自社の強みが一致している会社は、実は多くありません。この問いは、そのずれを可視化します。
ずれていること自体は問題ではありません。ずれていることに気づいていないことが問題です。気づけば、伝え方を変えるという打ち手が生まれます。
「3年後、この事業がなくなっていたら、何が困りますか?」
撤退や縮小を検討するときの問いです。「なくすべきか」と正面から聞くと感情が入りますが、この聞き方だと、その事業が担っている本当の役割が見えてきます。
収益は出ていなくても、技術の維持や人材の受け皿として不可欠だった、と分かることもあります。逆に、「特に困らない」という答えが返ってくることもあります。
問いの共通点
ここまで挙げた問いには、共通点があります。正解を持っているのは、私ではなく経営者だという前提に立っていることです。
外部の人間ができるのは、経営者の中にある答えを取り出しやすくすることです。分析も提案もそのための道具であって、目的ではありません。
おわりに
もし今、何かが停滞していると感じているなら、上のどれか1つを自分に問いかけてみてください。誰かに聞いてもらったほうが答えやすいという方は、その相手役としてお使いいただければと思います。