DX・IT 2026.05.12 by 呑海 賢次

DX人材がいない——は本当か?社内で育てる3ステップ

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DXの相談を受けていて、必ずと言っていいほど出てくるのが「うちにはDX人材がいないので」という言葉です。気持ちはよく分かります。ただ、少し立ち止まって考えてみたいのは、その「DX人材」とは、いったいどんな人なのかということです。

私は前職でIT企業に17年おりましたが、システム開発ができる人がDXを推進できるかというと、必ずしもそうではありません。中小企業のDXで本当に必要な能力は、実は別のところにあります。

中小企業のDXに必要なのは、技術の専門家ではありません。自社の業務を誰よりも知っていて、面倒なことを面倒だと言える人です。

必要なのは3つの資質だけ

推進役に求められる資質を、あえて3つに絞るとこうなります。

  • 業務を知っている:どこで手が止まるか、なぜその手順なのかを説明できる
  • 面倒くさがり:同じ作業の繰り返しに疑問を持てる
  • 人に聞ける:分からないことを、社外にも社内にも聞きに行ける

ITの知識は、この3つの後からで間に合います。逆に、ITに詳しくても業務を知らない人が旗を振ると、現場が使わないシステムができあがります。

ステップ① 「困っていること」を集める役をお願いする

最初にお願いするのは、ツール選定ではありません。現場の不便を集めることです。各部署を回って、「毎日やっていて、面倒だと感じる作業」を聞いて回ってもらいます。

ポイントは、解決策を考えさせないこと。この段階では、困りごとをできるだけ多く、生の言葉で集めることに集中します。20〜30個も集まれば十分です。

ステップ② 小さく1つ、自分で解決させる

集まった困りごとの中から、一番小さくて、一番身近なものを1つ選びます。「毎朝、3つのファイルを開いて数字を転記している」といったレベルで構いません。

これを、本人に解決してもらいます。表計算ソフトの関数でも、無料のクラウドサービスでも構いません。大事なのは、外注せず、自分の手で小さな成功を経験することです。

ここで「自分にもできる」という感覚が生まれます。この感覚こそが、DX人材への一番の入口です。

ステップ③ 社外の学びの場に出す

3つ目は、外に出すことです。社内だけで考えていると、どうしても発想が今のやり方の延長になります。

  • 商工会議所やIT導入支援事業者のセミナー
  • 中小企業大学校などの公的研修
  • 同業他社や取引先の現場見学

ここでも重要なのは、送り出す前に「持ち帰ってきてほしいこと」を1つ決めておくことです。目的のない受講は、記憶に残りません。

経営者がやるべきこと

推進役を任命したら、経営者の仕事は3つです。

  • 他業務を減らして、時間を確保する(これが一番大事です)
  • 失敗しても責めないと明言する
  • 月1回、進捗を聞く場を持つ

特に1つ目。通常業務を100%抱えたまま「DXもよろしく」では、どんな人材でも動けません。時間を渡すことが、任命することとセットです。

おわりに

DX人材は、採用市場で取り合うだけのものではありません。多くの中小企業では、社内にすでに候補がいます。その人に時間と経験を渡せるかどうかが、分かれ目になります。

誰を推進役にすべきか、といったご相談も承っています。

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