幹部候補が育つ会社の「任せ方」の違い
「幹部が育たない」というご相談は、規模を問わずいただきます。よくお話を伺うと、任せていないわけではありません。むしろ、たくさんの仕事を渡している会社のほうが多いくらいです。
では、何が違うのか。渡しているものの中身が違うのです。今日は、育つ任せ方の条件を3つに整理します。
作業を渡すことと、権限を渡すことは違います。前者をいくら積み重ねても、人は判断できるようになりません。
条件① 判断の権限を、範囲つきで渡す
育たない会社に共通するのは、実行は任せるが、判断は社長がするという構造です。これでは、部下は手を動かす人のままです。
渡すべきは、判断そのものです。ただし、無制限に渡す必要はありません。範囲を決めて渡すのが実務的です。
- 「○万円までの発注は、報告だけでよい」
- 「既存顧客への値引きは、○%までなら自分で決めてよい」
- 「シフトの調整は、任せる。人員の増減だけ相談してほしい」
この線引きが明確だと、部下は安心して判断できます。逆に曖昧だと、結局すべてを確認しに来ることになります。
条件② 判断に必要な情報を、同時に渡す
権限を渡しても、情報を渡していなければ判断できません。ここが抜けている会社は、非常に多い。
具体的には、次の情報です。
- 担当領域の売上・原価・粗利(社長だけが見ている数字を開く)
- 取引先ごとの利益率や、取引の経緯
- 会社全体の方針と、その背景にある考え
数字を開くことに抵抗を感じる経営者は少なくありません。ですが、数字を知らない人に、数字の責任は取れません。全社の決算を開示するのが難しければ、担当部門の範囲からでも構いません。
条件③ 失敗の扱い方を、先に決めておく
3つ目が、最も差がつくところです。任せれば、必ず失敗が起きます。そのときの反応が、次の挑戦を決めます。
おすすめしているのは、任せる時点で「失敗の許容範囲」を伝えておくことです。
「この判断で、最大○万円の損失が出る可能性がある。それは想定内だから、思い切ってやってほしい。ただし、想定を超えそうだと感じたら、その時点で相談してくれ」
こう伝えておくと、部下は萎縮せずに判断でき、かつ早めに相談してくれるようになります。
やってはいけない3つのこと
- 途中で取り上げる:不安になって社長が引き取ると、以後、誰も本気で受けなくなります
- 結果だけで叱る:判断の過程が妥当だったかを見てください
- 周囲に伝えていない:任命を社内に明示しないと、部下は他部署から相手にされません
社長の側の準備
任せられない理由が、部下ではなく社長の側にあることもあります。
- 自分でやったほうが速い、と感じる
- 顧客が社長を指名してくる
- 任せた後、自分は何をすればいいか分からない
3つ目は、意外と根が深い問題です。任せた後に自分が向かう先──新規開拓、次の事業、地域での活動──を先に決めておくと、手放しやすくなります。
おわりに
幹部育成に、特別な研修は必ずしも必要ありません。権限、情報、失敗の扱い。この3つを整えるだけで、人は驚くほど変わります。
何をどこまで任せるか、という設計のご相談も承っています。